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小説

日本アクション純文学シリーズ8「大雪女対大河童」

「がおー!」
 深夜の住宅街に突如として身長50メートルの巨大な雪女が出現した。大雪女は暗い街の空を見回して、「がおー」と溜息をつき、その場にしゃがみこんだ。
 しばらくして、「がおー!」と身長50メートルの巨大な河童が出現した。大河童は大雪女の近くに駆け寄り、「がおー」と頭を掻いて苦笑いをした。
「がおー」と大雪女は大河童の顔を見ずに、うつむいたまま答えた。
「がおー」と大河童は両手を小さく広げて言い、その両手でぱたりと下ろして太腿の脇を叩いた。
 これに対して大雪女は「がおー」と、あまり興味なさそうに小さく答えると、ゆっくり立ち上がった。
「がおー?」と大河童は大雪女に声をかける。
 すると大雪女は、地面に向けていた目線を、初めて大河童に顔を向けて
「がおー」と静かに言い、またすぐに目をそらして遠くでまたたく街の明かりを眺めた。
 しばらく沈黙が続く。街はほとんど寝静まっていた。まばらな街路灯が道路を冷たく照らしている。家々の窓の明かりはほとんどが消え、コンビニの看板が平たい街から立ち上がり、薄い夜霧の中に頭を突っ込んで光っている。
 二匹の怪獣たちが立っている場所は、市内を流れる大きな川の脇にある市民公園の野球グランドの中だったので、まだ建物に被害はなかった。 
「がおー」と大河童は、大雪女に話しかけた。
「がおー」と大雪女が小さく答える。
「がおー?」と大河童は次の言葉を促す。
「がおー」と目線を遠くに向けたまま、大雪女は話し始めた。
 その一部始終をすぐ近くから注視していたのは、一台の戦車だった。地球防衛隊だ。

 戦車の砲塔上にあるハッチからは隊長が顔を出していた。戦車前部の操縦席の上にある小さなハッチからは、迷彩色のヘルメットをかぶった隊員が顔を出して、大河童と大雪女の様子を覗っていた。
「なんか、大切な話があると大雪女に呼び出された大河童が、待ち合わせの時間に遅れて来て謝ってるって感じですかね」と隊員が怪獣たちから目を離さずに、大きな声で言った。
「この二匹は知り合い同士だったのか」と隊長は誰にともなく言った。
「攻撃しますか?」
 隊員は隊長に聞いたが、隊長は少し考えて答えた。
「いや、込み入った話のようだから、しばらくそっとしておいてやろう」
 そう言うと、ハッチから頭を引っ込め、静かにハッチを閉じた。それに続いて、隊員も音を立てないようにそっとハッチを閉じた。
 地球防衛隊の戦車は、最新式ではないが、内部に小さな座敷とトイレ(和式)を備え、怪獣との長期戦を戦えるよう、居住性を向上させてある。  
 ハッチを閉めた隊長は、砲塔のハシゴを下りて、100円ショップで買ったプラスティック製のサンダルを蹴飛ばすように脱ぐと座敷にあがり、自分の所定の位置に置かれた座椅子にどっかりと座った。
 隊員もヘルメットを脱いで、操縦席の操作桿にかぶせるようにして置くと、戦車の後方を向く形でちゃぶ台の前に正座し、畳の上の丸い木の盆の上に置いてあった茶筒を手に取った。
「なんの話をしているんでしょうね」
 隊員は茶筒の蓋を取って、中を覗き込みながら何度か軽く振り、底の方にわずかに残った茶葉の量を確かめながら言った。
「大雪女はちょっと涙ぐんでいたみたいだったぞ」
 隊長は隊員がお茶を入れるのをボンヤリと眺めながら答えた。
 二匹の怪獣は動かずに立ち話をしているだけなので、ときどき「がおー」と張り上げた声が聞こえてくるものの、あとは遠雷のようにかすかに会話が響いてくるだけで、比較的平穏だった。
 隊員は、茶筒の底から苦労して茶さじを取り出すと、それをちゃぶ台に置き、急須の上で茶筒を斜めにして、半分粉状になってしまった番茶の葉を流し込んだ。
 そんな隊員の手元を見ていた隊長だが、隊員がポットから湯を注ぐときには、ちゃぶ台の上にあったリモコンに手を伸ばし、テレビを付けた。

 戦車の中の四畳半ほどの座敷、とは言え正式な四畳半ではなく、いわゆる団地サイズの小振りな畳による四畳半だが、その中央にはちゃぶ台があり、隊長の席は進行方向に向かって右側と決まっていた。反対側の壁には小さな茶箪笥が置かれていて、その上に20インチの聞いたことのないメーカー名の液晶テレビが載っている。 
 テレビでは、大河童と大雪女が出現したと臨時ニュースを流している。
「おい、今何時だ?」
 隊長はテレビの画面から目を離さずに隊員に聞いた。
「十二時五分です」
 隊員は自分の腕時計を見て答えた。
「十二時十分に何か起きるらしいぞ。テロップに、じゅっぷんに気をつけろと書いてある」
「ええ?」と隊員は頭を横に向けて、右側に置いてあるテレビの画面を覗き込んだ。
「あ、違いますよ、隊長。怪獣が出たから十分に気をつけろと言ってるんです」
「『じゅーぶん』なのか? じゅっぷんではなく」と隊長はあまり納得できていない様子だ。
「ええ、それは十二時十分のことじゃなくて、今の話ですよ。今、気をつけてくださいって」
 隊員は念を押した。
「じゃあ、今が『じゅーぶん』なんだな?」
「そうです」
「じゃあ、五分後は『じゅーごぶん』か?」
「いえー……」
 隊員は返事に困ってしまった。隊長は本気で言っているのだろうか。からかっているのだろうか。それとも、自分を試しているのだろうか。だとしたら、いい加減は受け答えはできない。隊員は緊張した。
「ちがいます……」と隊員は言葉を慎重に選んで返答した。
「ふん」と隊長は釈然としない様子で、ずっとテレビに向けて持っていたリモコンを、静かにちゃぶ台に置いた。

「がおー」と大きな声が戦車の中に聞こえてきた。笑い声のようにも聞こえる。
「がぁおー」と女の声も大きく聞こえてきた。
「やだー」と言ってるようだ。
 深夜のコンビニの駐車場にしゃがんで話をしている若者たちの声が窓越しに聞こえてくるときのような、ぼそぼそと低い声が続いたかと思うと、ときどき大きな声が響いてくる。 
 隊員は、黙って隊長の湯飲みに茶を注いだ。
「ちょっと薄いですけど」と笑顔を作って隊長の前に湯飲みを差し出した。
 隊員は話題を変えたかった。しかし隊長は、テレビから目を離さず、湯飲みをゆっくりと持ち上げて言った。
「今がじゅーぶんだとしたら……」
 隊長は何かを考えながら、ゆっくりと言った。
「実際の十二時十分には、いったい何が起きるんだ?」
 隊長は目を小さくして、ちょっと困ったような顔で隊員を見つめていた。どうも隊長は本当に悩んでいるようだ。となれば、こちらとしても真剣に考えるべくだろう。なんと答えればいいのだろうか。十分が今なら、十分後には何がある? 改めて考えてみると、わからない。自分ではわかっていたような気になっていたが、自分には何もわかっていないことに気がついた。どこにも答の手がかりがない。何ひとつ、とっかかりがない。どこから何をどう考えればいいのかすらわからない。何が問題なのかすらわからない。

 気がつくと、外の「がおー」が聞こえなくなっていた。その場に居づらくなった隊員は立ち上がり、運転席のハッチを少し開けて様子を見ると、大河童と大雪女はまだそこに立っていた。
 大河童はちょっと顔を上げて、小さく「がお」と言った。隊員にはそれが、「そっか」と言っているように聞こえた。
 大雪女はうつむいたまま、ちょっと頷く。また沈黙が流れる。話が終わったならとっとと帰ればいいのにと隊員は思ったが、話すことがないから「じゃあ」と別れられないのが微妙な関係だ。何かきっかけがないと、なかなか帰りづらい。
 大河童はあたりをキョロキョロと見回す。時間を気にしているようだ。そして、「がーお」と両手を高くあげて伸びをした。
「さてと」と言っているように聞こえた。ここで帰るきっかけを作りたかった大河童だが、「がおー」と大雪女に言われて、はっとしたような顔をした。
「がおがお」
 大河童は何かを思い出したように、額に手を当てて言った。
「がおー」と大河童が大雪女に言うと、「がおーがおがお」と大雪女は、そうそう、そうだったわね、みたいな感じで答えた。また二匹の会話が活発になった。今度は雑談というより、表情が真剣だ。少し早口にもなっている。
 帰り際になると大切な用事を思い出すというのは、怪獣でも同じようだ。今までよりも、やや早口の事務的な口調で「がおー」と話し合っている。

 隊員は、二匹の怪獣に気付かれないように、そっとハッチを閉じて座敷に戻ってきた。
「どうだった?」と隊長が小声で聞くと、隊員は自分の場所に座り直して答えた。
「なんか、打ち合わせっぽいですね」
 隊員もつられて小声になる。
「怪獣がなんの打ち合わせだ?」
「さあ。同窓会の連絡をどう回すかみたいな雰囲気です」
 再び戦車の中は静かになった。
 隊長はリモコンを取り、右手の人差し指をリモコンの上に浮かせたまま、しばらくあちこちのボタンのラベルを見て、「画面表示」と書かれたボタンを押した。
 画面の右上に時刻が現れた。十二時八分。隊長は十分に起きる何かに備えて画面に見入った。
「何が起きてもいいように、攻撃態勢を整えておけ」
「はい」
 隊員は咄嗟に返事をし、急いで立ち上がって砲塔に向かおとしたが、隊長の「十分に何かが起きる」説にすっかり乗ってしまった自分に気付き、また座り直した。やっぱり隊長は、十分に何か特別なことが起きると思い込んでいる。

 ずしんずしんという地響きが戦車に伝わってきた。それと同時にテレビのアナウンサーが言った。
「怪獣たちに何か動きがあったようですね。現場の西山さん?」
「えー、ただいま、一匹の怪獣が、大雪女のほうですが、もう一匹、大河童の頭にですね、冷凍光線を浴びせまして、大河童の頭の皿の水が氷かけて慌てるという場面が見られました」
「戦いが始まったということでしょうか?」
 スタジオでわざとらしく似合わない白いヘルメットを頭に載せたアナウンサーが深刻そうな面持ちで尋ねた。
「その前に、何か言い争っているように見えましたので、かなり緊張して様子を覗っていたのですが、大雪女は慌てる大河童の様子を見て、ケラケラ笑っています。大河童のほうは、ちょっと立腹した感じですね。何かを強い口調で言ってましたが、すぐにいっしょに笑い出しました」
 テレビの画像は暗闇でよくわからない。アナウンサーの解説でなんとなく状況がわかるだけだ。
「大雪女、ちょっと機嫌が直ったみたいですね」と隊員は少し嬉しそうに言った。
「ああ、大雪女が怒ってないと知って、大河童も安心したみたいだな」と隊長が答えたそのとき、ちょうどテレビ画面の時刻が十二時十分に変わった。
「おっ!」と隊長が小さく言って、何かが起きるのを期待するように戦車の天井を見上げた。だが何も起きない。
「みなさん、怪獣の動きが活発になりました。どうか、十二分にお気をつけください」
 そしてテレビの画面の下には、「十二分にお気をつけください」とテロップが出た。
「おい見ろ! 十二分に変わったぞ!」
 隊長は驚いて隊員に言ったが、隊員は即座に反応できず、言葉に詰まってしまった。
「二分延びたか……」
 隊長は、噛みしめるような低い声で言った。
 ますます状況が複雑になった、と隊員は感じた。状況と言っても、物理的な状況は何も変わらず、ただ、隊長にどう返事してよいかに関する状況だ。「延びた」とは、起きるべき緊急事態は、何かの都合で延びたり縮んだりするものなのか。隊長はいったい、どんな事態を想定しているのだろうか。隊員はますます混乱した。

 返す言葉が見つからなかったので、隊員は隊長の言葉が聞こえなかったふりをして、運転席の小さなハッチを開け、頭を外に出した。すると、大河童と大雪女がゆっくりと歩きはじめるところだった。二匹は川に沿って山に向かっていく。
 隊員はハッチから頭を引っ込め、座敷に向かって報告した。
「隊長、二匹とも帰っていきました」
「ん」と隊長はテレビから目を離さずに小さく答えた。すでにテレビで見て知っていたのだ。
「みなさま、ご安心ください。たった今、二匹の怪獣は山へ帰っていきました。街に出されていた怪獣警戒警報は解除されました」とアナウンサーが伝えた。
 隊員が運転席からテレビを見ると、画面の時刻はちょうど十二時十二分に変わった。一瞬身構えたが、何も起こらないことを確認して、体の力を抜いた。
「ふーん、十二分のアレは土壇場で中止になったみたいだな」と隊長は誰にともなく言った。
 十二分のアレとは、いったい何だったのだろう。隊長の頭の中では、本来十二時十分には、そしてそれが二分延びた十二時十二分には、何が起きることになっていたのか。なんの説明もなく中止されてしまった今、もう知ることができない。そうなると、隊員はなおさら気になった。ネットで調べたらわかるだろうか。
 隊員はちゃぶ台の前に座り、そこに置かれていた共有のノートパソコンを開いた。そして、検索サイトで「十二分に何が」とまで書き込んで、手が止まった。
 ちがうちがう。あれは隊長の単なる思い込みなのだ。十二分に気をつけろとアナウンサーが言ったことを、十二時十二分に何かが起きると隊長が勝手に妄想していただけなのだ。自分もそれにつられて、十二分に何かが起きると思わされていた。すっかり隊長のペースに巻き込まれてしまった。やはり隊長はただ者ではない。
 隊員はノートパソコンをパタンと閉じて立ち上がり、運転席に向かった。
「隊長、帰還します」
「うん」
 ガオンとディーゼルエンジンが始動し、車体がブルブルと震えた。戦車はその場で百八十度回転して、やって来た道を戻っていった。幸いなことに、今回の二匹の怪獣による街の被害はほとんどなかった。唯一の被害は、地球防衛隊の戦車によって押しつぶされた無数の自動車や道路設備だけだった。

おしまい


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日本アクション純文学シリーズ7「大山椒魚対大河童」

「がおー!」
 夏の避暑地として賑わう湖畔の街に、突如として巨大な山椒魚が現れた。
「がおー!」
 すると、街からそう遠くない湖の中から巨大な河童が出現した。
 湖に面したお洒落な街並みを踏みつぶし、のし歩いていた大山椒魚は、大河童の咆哮に反応して振り返った。そのとき、大きな尻尾が高くそびえる高級リゾートホテルのタワー部分をなぎ倒した。
 大河童は大山椒魚の存在に気がつくと、両手で水を掻き分け、ざぶざぶと街に近づいてきた。大河童が立てた大きな波にもまれて、係留されていたボートが次々と沈んだ。
 湖底を歩いてきた大河童は、腰のあたりまで水上に姿を現した。すると大山椒魚は、尻尾と両足を使ってジャンプし、大河童に飛びかかった。
 大山椒魚は短い手足を広げ、大河童めがけてボディープレス。大河童は背後に倒れ、大山椒魚もろとも湖に没した。
 少しして、大河童と大山椒魚は上体を起こし、水面に上半身を表すと、今度は大河童が反撃に出た。大河童は水かきのある両手を使って、ばしゃばしゃと大山椒魚に水をかける。
 大山椒魚も負けずに、短い両手をぐるぐる回して大河童に水をかける。
 大河童を大山椒魚が追いかける。大山椒魚は短い両手を必死に動かして逃げる。二匹は輪になって浅瀬でばしゃばしゃと走り回る。
 そうかと思うと大山椒魚が大河童を追いかける。河童は深いところへ逃げると、大山椒魚は大きな尻尾を動かして泳いで追いかける。
 そんな繰り返しが続き、湖畔の街は水浸しになってしまった。しかし、それに構うことなく両者の激しい戦いは続いた。大山椒魚に水をかけられた大河童は、水がかからないよう片手で顔を覆いながら、もう片方の手で水を掻いては大山椒魚に水をかける。
「きゃー!」
「きゃははは」
 楽しそうな咆哮が響く。もしかしてこいつらは、戦っているのではなく、遊んでいるのか……?

 そのときだ、一台の戦車が水浸しの街に現れた。地球防衛隊だ。
 しかし、戦車は大砲を発射することなく、じっと大河童と大山椒魚の動きを伺っている。同時に二匹の巨大生物が出現して暴れ回るという、前代未聞の緊迫した状況を目の前にして、戦車の中ではこんな会話が交わされていた。
「たいちょー、お茶、ここ置きますね」
「うん」
 戦車内の座敷では、隊員と隊長が ちゃぶ台を挟んで番茶を飲んでいた。作戦会議だ。
「二匹もいたんじゃ、どっちを撃っていいかわかりませんね」
  ちゃぶ台に向かってあぐらをかいた隊員は、湯飲みを片手に持ち、後ろの茶箪笥に寄りかかっただらしない態勢で言った。
「そうだな」
 隊長は隊員の顔を見ずに、お茶を一口すすってから、うわのそらで答えた。
 作戦行動の前、隊長はいつも無口になる。作戦を考えているのだ。今度は二匹。かなり高度な技が要求される。
 隊長はもう一口、お茶をすすった。
 隊員は、それとなくハッチの方を見ると、開けたままにしていたハッチから、パラパラと雨が落ちてくるのが見えた。
「あ、降ってきたかな」
 隊員はゆっくりと腰を持ち上げ、ハッチを閉めた。
 やっぱり雨だ。湖のほうを見ると、それまで激しく動き回っていた大河童と大山椒魚は、慌てて岸に上がってきた。
 大河童は岸から少しあがったところの地面に、湖に向かって腰を下ろし、両手で膝を抱えた。
 大山椒魚はその脇に並んで、やはり湖に向かって横たわった。
 その様子を戦車の窓から見ていた隊員は言った。
「面白いもんですね。プールで雨が降ると、みんな上がってくるじゃないですか。水の中で泳いでいるのに、雨に濡れないように水から上がってくるって、おかしくないですか? だけど、なぜか雨が降るとプールに人がいなくなるんですよね。大河童と大山椒魚も、雨に気がつくと慌てて湖から上がってきましたよ。あいつらも同じなんですね」
 隊員は笑いながらそう言うと、元いた場所にあぐらをかいて冷めたお茶を飲み干した。
「今のうちに攻撃しちゃいましょうよ」
 隊員はそう持ちかけたが、隊長はあぐらをかいたまま、両手を後ろの床について天井を見上げ、ふんと鼻で息を吐いてから、隊員の顔を見ずに答えた。
「何もしてないんだろ?」
「ええ、雨が止むのを待ってるみたいです」
「じゃあ気の毒だ。無抵抗の相手を撃つのは気が引ける」
「それもそうですね」
 隊員は同意して、 ちゃぶ台の上の菓子鉢から柿の種を左手でひとつかみ取った。あぐらをかき、背中を丸めて両方の腕を ちゃぶ台にのせた姿勢で、手の中から、右手で柿の種をいくつか取り出し、肘をついたまま口に放り込む。カリカリと柿の種を噛む。
 また、握った手から柿の種をいつまみ出し、口に入れ、カリカリと噛んだ。
 戦車の中では、カリカリが続いていたが、あるとき隊員は左手を開き、握っていた柿の種を見た。やっぱりだ、ピーナッツがない。
「隊長、ピーナッツだけ食べたでしょ」
 座椅子にもたれかかり、何かを考え込むように目を閉じている隊長からは返事がない。そうだ、隊長は作戦を考えているのだ。こんな話で邪魔をしてはいけない。隊員は思った。
 そのとき、「んが」と鼻を鳴らす音がして、隊長の体がぴくりと動いた。
 隊長は目を開けて言った。
「あ、イビキかいてた?」
 寝てたみたいだ。
「いやー、自分のイビキでビックリして起きちゃうことって、あるよね」
 誰にともなく、照れ臭そうに言うと、隊長は上体を起こして菓子鉢の柿の種をひとつかみ取り、そのまま口に放り込んだ。
 しばらくカリカリと柿の種を噛んでいた隊長は、ちょっと眉を寄せた。
「おい、お前、ピーナッツだけ食べただろう」
 隊長からの意外な言葉に隊員は慌てた。
「えー! 食べてませんよー。それ隊長でしょう」
「そんなはずがあるか。無意識のうちに食ってんだよ、ピーナッツだけ」
 そう言うと隊長は、菓子鉢の柿の種を人差し指でかき混ぜて、ピーナッツを探したが、ひとつも残っていない。
「やっぱり」
「ええー、食べてませんから」
 まったく身に覚えがなく、濡れ衣を着せられた気分の隊員は、少し腹を立てた。
「じゃあ、最初からピーナッツの量が少なかったということか。どこの柿の種だ」
「蒲田の東急ストアで買ったやつですけど」と言いながら、隊員は座ったまま茶箪笥に手を伸ばし、いちばん上の小さな引き戸を開けて柿の種の袋を取り出した。
「ほら、いつものやつです」
 隊員は柿の種の袋をぽんと ちゃぶ台に置いた。
 隊長はそれを手に取り、眉間にしわを寄せてやや顔を上げ、遠近両用メガネの下の方を通して袋の裏書きの細かい文字を読みながら言った。
「柿の種とピーナッツは五対五が理想なんだ。ピーナッツが少ないなんて、おかしいじゃないか」
 五対五って……、『そりゃなくなるよ!』と隊員は心の中で叫んだ。柿の種とピーナッツの比率は、大抵、柿の種のほうが多い。今は柿の種とピーナッツは六四が黄金比とされ、メーカーもそのあたりの配合にしている。だから五対五で食べ続ければ、ピーナッツが先になくなるのは当然だ。
 犯人は隊長じゃないかー、と隊員は思ったが、口には出さなかった。言ってはいけない。そんな雰囲気が隊長にはあった。隊長が怖いからではない。むしろ、隊長には傷つきやすい雰囲気があった。傷つきやすいであろうと思わせる雰囲気があるだけであって、実際に傷つきやすいかはわからない。それは隊員が勝手に感じているものであったのだが、そう感じさせる何かが隊長にはあった。 
「苦情係に電話してみるか」
「いや、そこまでしなくても」
 隊員は慌てた。柿の種とピーナッツは五対五で入っているものと思い込んでいるのは隊長のほうで、メーカーは何も悪くない。それなのに苦情の電話なんて入れたら、恥をかくのは隊長だ。そんなことを隊長にはさせられない。
「お前、電話してみろ」と隊長が言った。
「自分っすか?」
 隊員はすっとんきょうな声をあげた。
「えー、そんな、隊長が電話してくださいよー」
「うーん、知らない人に電話するのは苦手なんだよね」
「でも、苦情があるのは隊長でしょ。自分はまったく文句ないんですから。誰かの代わりにケンカするみたいなの、いやですよ」
「ケンカしろとは言ってない。苦情を伝えてほしいだけだ。じゃあ、私が電話をかけるから、かかったら、あとは替わってくれ」
「おんなじですよ」と隊員が言っている間に、隊長はもう自分の携帯電話に番号を打ち込んでいる。
「ほらかかった!」と隊長は、時限爆弾でも渡すように、携帯電話を隊員に放り投げた。
 隊員は慌てて携帯電話を拾い上げ、耳に当てた。
『お電話ありがとうございます。鶴山製菓お客様係担当の米田でございます』
 感じのいい女性の担当者が出た。
「あ、すいません。あのじつは、柿の種のことで、ちょっとおうかがいしたいのですけど」
『はい、どのようなことでしょうか』と担当者が言うのと当時に、隊長が「おうかがいじゃなくて、苦情だぞ苦情」と小声で口を挟んだ。
「あ、はい?」
 両方の耳にからそれぞれ違う人間の話を同時に聞かされたので、隊員はすっかり混乱してしまった。
『私どもの柿の種に何かございましたでしょうか』と担当者が聞き返すのと同時に、隊長が「ピーナッツの量が少ないと言え」と言った。
 たまらず隊員は、電話のマイクを手で覆い、隊長に向かって「ちょっと黙ってて」とほとんど声を出さずに、その代わりわざと大きく口を開けて言った。
 隊員はすぐにまた電話を耳に当てた。
「あの、柿の種はとてもおいしくて、いつも愛用させてもらってるんですけど」
『それは、いつもありがとうございます』と担当者。するとまた隊長が同時に「下手に出ると舐められるぞ」と言った。
 隊員は隊長の声を聞かないようにして話を進めた。
「あの、柿の種とピーナッツの配分なんですけど、ピーナッツがちょっと少ないような……」
『はい、当社ではお客様のご意見をもとに』
「おいおい、ちょっととはどういうことだ」
『柿の種とピーナッツの適正な割合を求めておりまして』
「五対五じゃないといけないんだ、そこをハッキリ言え」
『現在は柿の種六に対しましてピーナッツ四の割合でご提供しております』
「お前のところでは厳格に五対五の割合を守っていないのかと問い詰めろ」
 苦情係の担当者の話が右の耳から、隊長の話が左の耳から同時に聞こえる。何を聞いているのかわからなくなり、「ええ、はいはい」と隊員はやっと答える。
『もちろん、それですべてのお客様にご満足いただけないことは、承知しています」
「甘い甘い、不良品を掴ませやがって、ピーナッツが足りない分、金を返せと言え」
 担当者の一言一句に隊長の言葉がかぶる。隊長がモンスタークレーマーのようになってきた。
「はい、そうですね」と答えるのが隊員にはやっとだった。
『ピーナッツが少ないというご不満ですが、そうしたご意見にも添えるよう、今後とも精進して参ります』
「甘い顔してりゃつけあがりやがって、お前じゃ話にならないから、もっと上の人間を出せと言ってやれ」
 誰もつけあがってなんかいない。隊長には担当者の声は聞こえていない。勝手に妄想を膨らませて怒っている。
「あ、はい。今後ともよろしくお願いします。頑張ってください」と、隊員はなんだかよくわからない挨拶をして電話を切ると、携帯電話を ちゃぶ台の中央に叩きつけるようにして置き、隊長を睨み付けた。
「わかんないですよ! 電話中に横からあれこれ言われても。あっちも話してるし。なんのために電話したのか、ぜんぜんわかんないですから」
 興奮する隊員に、隊長は小さく言った。
「だから、もっとガツンと言ってやればよかったのに」
「ガツンとかなんとか、そういう話じゃないし。だいたいピーナッツの数は……」
 そこまで言いかけて、隊員は口をつぐんだ。隊長が隊員の剣幕に押されて、少したじろいだように見えたからだ。ビックリしたモグラのような顔をしている。
「外の様子を見てきます」
 隊員は深く息を吐いて立ち上がり、ハシゴを登ってハッチを開いた。
 雨はまだ降っていた。 
「あれー?」
 隊員は周囲を見回した。そして、ハシゴに登ったまま頭をハッチの中に入れて、隊長に向かって大きな声で言った。
「二匹ともいなくなっちゃいました!」
 隊員はハッチを閉めてハシゴを下り、あらためて隊長に報告した。
「どっか行っちゃいました」
「あら、そうなの」
 隊長は少し考えて言った。
「たぶん、雨が止まないから、諦めて帰ったんだな」
「なーんか、緊張の糸が切れちゃいましたね」
「まあ、とくに被害がなくてよかった」
「そうですね」
「帰るか」
「はい」
 隊員は操縦席に向かった。
 隊長は、菓子鉢に残った柿の種を掴んで口に入れた。カリカリという音が、操縦席に座った隊員の耳に届いた。
「あれ、隊長、ピーナッツの入ってない柿の種でも食べるんですか」
「ん? ああ。ピーナッツなしでもうまいな」
 じゃあ、さっきのアレはなんだったんだ、と隊員は思ったが、それは自分の胸に納めておくことにした。これでいい。今日も一件落着だ。
 隊員はそう自分に言い聞かせ、戦車のアクセルを踏んだ。

おしまい




  
 



  


本当の「雪女」 Google翻訳編

雪女

Patrick Lafcadio Hearn 作 / Google 翻訳
モサクとミノキチ 

武蔵野の村には、モサクとミノキチの2つの木工師がいました。私が話している時、モサクは老人でした。彼の弟子であるミノキチは18歳の若さでした。毎日彼らは村から約5マイル離れた森に集まった。その森への道のりには広い川があります。フェリーボートがあります。フェリーがあるところに数回橋が建設されました。しかし、橋は毎回洪水によって持ち去られました。川が上がったときに、そこに流れ込む電流に抵抗することのできる共通の橋はありません。

モスクとミノキチは帰宅途中だった。非常に寒い夕方、大きな吹雪がそれらを追い越した。彼らはフェリーに到着した。ボートマンが川の向こう側にボートを残していたことが分かった。それは泳ぐ日ではなかった。ウッドカッター達はフェリーマンの小屋で避難所を取った。小屋に火鉢はなく、火をつける場所もありませんでした。それは1つの扉があり、窓はない2畳の小屋でした。モサクとミノキイチはドアを締めて、その上に藁の雨の上に乗って休息した。最初は彼らはとても冷たく感じませんでした。彼らはすぐに嵐が終わると思った。

老人はすぐに眠りに落ちた。少年ミノキチは長い時間目を覚まし、ひどい風に耳を傾け、雪をドアに絶えず叩きつけていた。川は轟音であった。小屋は揺れて海の迷路のように鳴り響きました。それはひどい嵐だった。空気は一瞬一層寒くなりました。ミノキチはレインコートの下で震えました。しかし、ついには、寒さにもかかわらず、彼はあまりにも眠りについた。

彼は顔に雪が降りて目が覚めた。小屋の扉は強制的に開放されていた。そして、雪光(ゆきかかり)によって、彼は部屋の女性を見ました - 白人の女性。彼女はモサクの上で曲がっていて、彼女に息を吹きかけていた。そして彼女の息は明るい白い煙のようだった。ほぼ同じ瞬間に、彼女はミノキチに向かい、彼をひっくり返した。彼は叫んだりしようとしましたが、何の音も出せないことがわかりました。白い女性は、彼の顔が彼にほとんど触れるまで、彼の上を下ったり下ったりした。彼は目が彼を恐れさせたが、彼女はとても美しいと思った。彼女は笑って、笑って、「他の人と同じように扱いたいと思っていたが、若い頃、あなたに同情を感じるのを助けることはできない。あなたはかわいい男の子、Minokichiです。今はあなたを傷つけません。しかし、もしあなたが今夜あなたが見たことについて誰か、つまり自分の母親まで言えば、私はそれを知るでしょう。それから私はあなたを殺すだろう...私の言うことを忘れないで! "

これらの言葉で、彼女は彼から向かい、出入り口を通りました。それから彼は自分自身を動かすことができた。彼は立ち上がり、見た。しかし、女性はどこにも見えませんでした。雪が小屋に激しく吹き込んでいた。ミノキチはドアを閉め、数枚の木材をそれに固定して固定した。彼は風が開いているかどうか疑問に思った;彼は唯一の夢を見ていたかもしれないと思って、白い女性の人形のための玄関の雪の光の煌きを間違えたかもしれないが、彼は確信することができませんでした。彼はモサクに電話し、老人が答えなかったのでびっくりした。彼は暗闇の中で手を出し、モサクの顔に触れ、それが氷であることを発見した!モサクはスタークで死んでいた...

夜明けの嵐は終わった。その日の少し後に、駅に戻ったとき、彼はミノキチがモザクの凍った体のそばに無意識のうちに横たわっていることを発見した。 Minokichiはすぐに世話をされ、すぐに自分自身に来た。その恐ろしい夜の寒さの影響から、彼は長い間病気のままでした。彼は老人の死によっても大きく怯えていた。彼は白人女性のビジョンについては何も言わなかった。彼が再びうまくやって来るとすぐに、彼は毎朝森に行き、夕暮れ時に彼の母親が販売するのを助けた木製の束で戻ってくる彼の呼び出しに戻りました。

ある晩、翌年の冬に、家に帰る途中で、同じ道を旅していた少女を追い抜いた。彼女は背の高い、スリムな女の子、非常に格好良かったです。彼女は鳴き声の声のように声を響きながら、箕木斉の挨拶に耳を傾けて答えた。それから彼は彼女のそばを歩いた。彼らは話を始めた。女の子は彼女の名前はO-Yukiだったと言った。彼女は最近、両親を失いました。彼女はええに行くことになっていました。彼女は何らかの貧しい関係を経験したことがあり、彼女は奴隷としての状況を見つけるのを助けるかもしれません。

ミノキチはすぐにこの奇妙な女の子に魅了された。そして彼が彼女を見た以上に、彼女はハンマーと思われた。彼は彼女にまだ婚約しているかどうか尋ねた。彼女は笑いながら、彼女は自由であると答えました。そして、彼女は自分の順番で、ミノキチに、結婚しているのか、結婚するのかを尋ねました。彼は、彼女には、未亡人の母親しかいなかったが、 "尊敬される義理の義理"の質問は、まだ若い頃から考慮されていなかったと語った。これらの信頼の後、彼らは話すことなく長い間歩いた。しかし、諺が示すように、キ・ガ・アッバ、私はモク・クーディ・ホドニ・モノウォー・イウ:「希望があれば、目は口のように言える。彼らが村に到着するまでに、彼らはお互いにとても喜んでいました。ミノキッチはおゆうきさんにしばらく家に帰るように頼んだ。いくつかの恥ずかしがり屋の後、彼女は彼と共にそこに行った。彼の母親は彼女を歓迎し、彼女のために暖かい食事を用意しました。おじいちゃんはあまりにもうまく行動していたので、ミノキチさんの母親は突然彼女に気に入って、彼女にイエローの旅を遅らせるよう説得しました。そして、問題の自然な終わりは、ユキは決してええに全く行きませんでした。

彼女は「名誉ある義理の嫁」として家に残った。 O-Yukiは非常に良い義理の義理を証明しました。ミノキチの母親が死にました - 5年後、最後の言葉は息子の妻のために愛情と賛美の言葉でした。そして、O-Yukiは10人の子供、少年少女、それらのすべての子供たち、そして非常に公平な皮膚を持っています。

田舎の人は、O-Yukiは本質的に素晴らしい人物だと思っていました。農民女性の大半は早く年を取る。 O-Yukiは、10人の子供の母親になってからも、村に初めて来た日のように若くて新鮮なものでした。ある夜、子どもが眠った後、おゆきは紙のランプの光で縫い合わせていた。とミノキチは、彼女を見て、言った: -

「あなたがそこに縫うのを見るためには、あなたの顔に光を当てて、私が18歳の若者の時に起こった奇妙なことを考えさせてください。あなた...」彼女の仕事から目を離さずに、O-Yukiは答えました。「彼女について教えてください...どこに彼女を見ましたか?それから、ミノキチは、フェリーマンの小屋と、彼の上に腰をかがめていた白い婦人の笑い声と囁き声、そして老いたモサクの沈黙の死について、彼女に語った。そして、彼は言った:

「眠っているか目が覚めている、それは私があなたのように美しいと思った唯一の時間でした。もちろん、彼女は人間ではなく、私は彼女を恐れていた、非常に恐れていましたが、彼女はとても白でした!私が見た夢なのか、雪の女なのかは決して確かではありませんでした」「おゆうきは縫い物を下ろして起き上がり、ミノキチの上を歩いて座って叫んだ彼の顔に -

「それは私なんだよ!雪だよ!そして、もしあなたがそれについて話したら、私はあなたを殺すだろうと言ったんだけど...でも、そこに眠っている子供たちは、この瞬間にあなたを殺すだろう!今あなたは彼らのことをとてもうまくやっているほうがいいと思うのですが、これまでにあなたに不平を言う理由があれば、私はあなたにふさわしいようにあなたを扱います!」...彼女が叫んだとしても、彼女の声は、彼女は屋根の梁に溶け込んだ明るい白い霧の中に溶けて、煙の中を震え去りました。もう一度彼女は見られませんでした。


解説


これまでにいろいろな人が翻訳している小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の『怪談』だが、現代の技術の結晶である機械翻訳の中でも、もっとも進歩したGoogle翻訳であらためて訳してみると、昔の訳者では気が付かなかった原文の本当の意味が浮き彫りにされる。
モサクとミノキチは、フェリーボードに乗って帰ろうとしていた。江戸時代の話だと思われていたが、どうも違うらしい。また、ミノキチはフェリーマンの小屋で恐ろしい体験をして、急いでモサクに電話をかけているが、二畳ほどの小さな部屋にいる相手にかけるということは、携帯電話が普及していたことを示している。
また、他の訳では、O-Yukiは江戸に向かう途中だったとされているが、今回の翻訳でO-Yukiが白人女性であることがわかり、また行き先もイエローの街ということも判明した。つまり、時代どころか、舞台となった世界も日本ではないようだ。
最後にO-Yukiは「それは私なんだよ!雪だよ!そして、もしあなたがそれについて話したら、私はあなたを殺すだろうと言ったんだけど...」と語気が変化したと思えば、その後は何を話しているのかわからない。やっぱりO-Yukiは外人だったのだ。
それは別として、肝心な結末部分で、主人公のひとりであるO-Yukiが何を言ってるのかわからないので、物語として、何が言いたかったのか、ぜんぜんわからない。釈然としない。なんだこれ? である。小泉八雲、どうかしてるぞ。

ロミオとジュリエット バルコニーのシーンより

おら
ロミオ 彼は傷を感じたことはない傷跡でjests。
  
--ジュリエットは、ウィンドウに上記の表示されます 
 
しかし、柔らかいです!あそこの窓休憩を通じて何光? それは東で、ジュリエットは太陽です。 
、公正な日を生じ、嫉妬月を殺します、 悲しみと病気と淡いすでに誰が、 
彼女より彼女メイドアートはるかに公正あなたがそれ: 
彼女は嫉妬であることから、彼女のメイドではないこと。 
彼女のヴェスタルカラーリングはなく、病人や緑であります 
そして愚か者が、どれもそれを着用行いません。それを脱ぎ捨てます。 
これは、O、それは私の愛で、私の女性です! 
O、彼女は知っていたことを! 
どのようなことで:彼女は何も言うまだ話しますか? 
彼女の目の言説。私はそれにお答えします。 私は彼女が話す私にはないTIS '、あまりにも大胆です:
すべての天の最も公平の星の二、 
いくつかのビジネスを持って、彼女の目を切望ん 彼らが戻るまで自分の球にきらめきます。 
彼女の目には、彼らが彼女の頭の中で、そこには何でしたか? 
彼女の頬の明る恥それらの星だろう、 
昼光のようにランプをおら;天に彼女の目 
とても明るく風通しの良い領域ストリームを介しだろう 
鳥が歌うと、それは夜ではなかったと思うだろうということ。 
彼女は彼女の手時に彼女の頬に傾いているか、ご覧ください! 
O、私はその手の上に手袋であったこと、 
私はその頬に触れる可能性があることを! 

 JULIET 私あぁ! 

 ロミオ 彼女は話す:
 O、再び話す、明るい天使!あなたの芸術のため 
この夜の栄光のように、私の頭のo'erあります 天の翼のある使者であるように 
ホワイト上向き不思議そうにうんと 
彼に戻って視線にフォール死すべき者の 
彼は怠惰なペーシング雲をbestridesとき 
そして、空気の懐の際に帆。 

JULIET Oロミオ、ロミオ!ロミオあなたなぜアート? 
あなたの父を拒否し、あなたの名を拒否する。 
または、あなたは、私の愛を誓っされていないくださる場合は、 
そして、私はもはやキャピュレットならないでしょう。  

ロミオ [脇]私はより多くを聴かなければならない、または私はこので講演しなければなりませんか?  
JULIET 'Tisの私の敵であるthy名前。 
ないモンタギューけれどもあなたは、自分自身の芸術。 
モンタギューは何ですか?それは、手、また足でも、 
アーム、また顔、また他の部分も、 
男に属します。 O、他のいくつかの名前であります! 
名前には何ですか?私たちはバラを呼ぶもの 
他の名前で甘い匂いだろう。 
だからロミオは、彼ではないロミオのcall'dただろう、 
彼が負うこと親愛なる完璧を保持 
そのタイトルなし。ロミオは、あなたの名を脱ぎます、 
そして、あなたのいかなる部分ではありません、その名前のために すべてを自分で取ります。

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 金井哲夫の後書き  
大変に有名なシーンですが、日本語に訳すとこういう具合です。非常に難解ではありますが、これはラップ調に読むとなかなかいい具合になります。つまり、意外に現代的な文章であるということです。


社長のショートストーリー『とある蘭学者の行く末』

社長1 蘭学者の看板を上げたばかりの太郎は、どうも分けのわからない憂鬱な気持ちに襲われていた。

 大阪の緒方洪庵の蘭学塾で塾頭だった福沢諭吉という男が、江戸に出てくる途中、開港間もない横浜に立ち寄ったときのことが、蘭学者仲間で話題になっている。
 西洋人の居住する地域に立ち並ぶ商店や会社の看板に、ひとつも読めるものがなかったというのだ。もちろん、福沢の蘭語の能力が低かったわけではない。
 横浜の開港地でひとつも蘭語を見いだせなかったのである。幅をきかせていたのは英語だった。これは、日本と条約を結んだ英米仏露蘭の5カ国の内の世界での幅のきかせ方を自ずから反映しているものだった。
 もう蘭語の時代ではない、と福沢は英語を勉強する手立てを講じ始めたというのである

 太郎は、朝江戸を発して、横浜に向かっていた。
近ごろ小さな蘭学塾を開いたばかりである。これまで、愚直に蘭語を学んできた。なんだか、蘭語によって人にしてもらったという恩義のようなものさえ感じている。
 蘭語の時代は終わったという福沢の言葉は、本当だろうか。それを自分の目で確かめないわけにはいかない。

 侍の家の長男として生まれ、本来なら家を継がなければならない立場であったが、子どもの頃の太郎は愚鈍であった。なにしろ一四歳になるまで文字というものの存在に気づかなかったのである。
あまりに愚かなので、親は太郎に家を継がせるわけにはいかない、と判断して、お上には病弱ゆえ次男を跡取りとすると届け出て許された。長男でありながら冷や飯食い、日陰の身になってしまったのである
 勢い遊び相手も年下の子供達ばかりになり、それも自分より小さな子に鼻面引き回されるという具合だった。
 その日も、年下の友達・たっちゃんと一緒に街を歩いていた。ふと、たっちゃんは立ち止まり「うなぎ」と言った。
 太郎は、道の上にウナギがのたくっているのだろうか、と思ったが、そんなものはいない。たっちゃんは、とある店先の看板を指して再び、「うなぎ」と言った。怪訝な顔をしている太郎を見て、
「字だよ。ウナギって書いてあるんだよ」
「字?」
 たっちゃんは、看板上のうねうねとした模様を指さして、何度も「うなぎ」と発音した。確かに、その妙な模様はウナギに似て無くもないが、などと思っていたが、どうも、その模様が「う・な・ぎ」という音に結びついているらしいと悟ったとき、太郎の頭に稲妻が走った。
 この世は、実に「字」に充ち満ちているようなのである。それを教えてくれた恩人はたっちゃんであり、場所は鰻屋の店頭であった。
 太郎は、一四歳にして寺子屋に上がり、数ヶ月にして漢学塾に転じた。学んでも学んでも学び足りないくらい文字があるということに驚愕していた。世界が一変してしまった。

 文字を読み慣れている人にとっては、耳で聞く音と目で見る形が当たり前のように結びついているらしい。目は目であり、耳は耳である。なぜ、別々のものが一緒になるのか、その不思議さが太郎を言葉の世界に引きずり込んでいる。引きずり込むと同時に壁となって立ちはだかっている。
 さらに偶然、蘭語という言葉の存在を知る。ここで、さらに頭の中の扉が開いた。言葉という世界の不思議が、また太郎の背中をくすぐる。その言葉を学びたくてたまらなくなった。
 しかし、親は多くの日本人と同様、外国嫌いだった。蘭学など汚らわしき洋夷の学問と心得ていた。気分は攘夷だったのである。
 ある日、太郎は親から受け取った漢学塾に納めるはずの謝礼金を持って、とある蘭学塾に駆け込んだ。
 幸い先生は親切な人で、太郎を受けいれたばかりでなく、住み込みを許した。親との間も取り持ってくれた。大名のお抱え学者という他に収入源のある人だったので、むしろ塾の方は蘭学を世に広めるためという使命感の上でやっている。当時しばしば見られたタイプである。
 蘭語の本を筆写すると、それがいくらかになった。そんなアルバイトをしながら勉強を続け、ついには自らの小さな塾を持つことが出来た。
 蘭語が自分を人にしてくれた恩義を感じている、というのには、そんな思いがある。
 福沢のように、時代遅れだからと言って蘭語から英語に乗り換えるという器用さは太郎にはなかった。

「だが・・・・・・」
 ここのところ自分の感じている憂鬱は、英語と蘭語の問題だけだろうか。それだけだったら、両方勉強すればいいということにもなる。いや、言葉の不思議さに突き動かされてここまで来た自分であれば、むしろ英語のみならず仏語、露語などまで手を伸ばすのもやぶさかでないつもりだ。
 横浜に住み込んで、今日はあっちの先生、明日はこっちの先生とかけずり回る生活だって構わないという気持ちもある。それはそれで、ひとつの道なのだろう。
 だが、それだけではない。自分の心の、もっと奥深いところに何か引っかかるものがあるように思えてならないのだ。

 朝、江戸を出て、品川、大森と過ぎ、六郷川を渡って、川崎を越えた。今日は神奈川宿で一泊するか、できれば横浜に入ってしまいたい。
空は晴れ渡り、左手にはずっと静かな遠浅の海が続いている。
 街道をそれ、海岸に出て一服した。もうすぐ、西洋の船が見えてくるはずだ。
 横浜に出て、自分は何をするのだろう。もちろん、ただの遊山ではない。何か、蘭語に礼を言いたい。出来れば、蘭人に会って話をしたい。
 漠然としていると言えば漠然としている。かといって江戸にじっとしていられる気分でもなかった。重い気持ちを引きずってでも行かねばならぬ、と思っていた。

 子供達の声が聞こえてきた。なにやら興奮している感じである。
 見るとその辺の漁村の子供達が、何かを取り囲んで騒いでいる。平べったい岩のように見える。かなり大きなものである。
 ウミガメだった。
 あんな大きな亀が江戸湾にいたのか。もっとも、イルカだってクジラだって迷い込んでくることがあるのだから、いても不思議はないが。
 子供達は、棒きれで亀を叩いたり蹴飛ばしたりしている。太郎は立ち上がった。
 大きい図体の癖に、年下の子供達にいじめられていた昔の自分が、その亀に重なったのである。

 亀は涙を流していた。そして口を聞いた。
「助けていただいて、ありがとうございました」
 亀も言葉を話すのか。もしかすると、カメ語というものが存在する可能性がある。西洋各国の言葉の先にさらに学ばなければならない言葉あるかもしれない、ということに太郎はめまいを覚えた。
 亀は続けて言った。
「蘭学者の浦島先生ですね」
「確かに私は蘭学をやっている浦島太郎だが、私を知っているのか」
「はい。実は先生がお通りになるのをお待ちしておりました」
「なぜ」
「先生を乙姫様のおられる竜宮城へご案内したいのです

「私は、これから横浜へ行くのだ」
「乙姫様の言いつけなのです。竜宮城へ行ってみたくはありませんか」
「竜宮城など行きたくはない。横浜へ行く。学問のためだ」
「私の背中に乗れば、海の外へ出て行けるのですよ」
 とカメはやや狡猾そうに言った。
「海の外・・・・・・しいて言えば、オランダへ行きたい。もっとも海外渡航は許されないだろう。ペルリがやって来たとき、吉田松陰という男が密航を企てて、牢に入れられたという話だ」
「私は世界の海を巡っているのです。竜宮城に来ていただければ、ついでにオランダでも英国でも連れて行って差し上げます」

「この方が浦島様」
 乙姫は太郎を見るや、しがみつかんばかりに寄ってきた。そして、自ら手を取ると宮殿の奥へと誘い、しとねのような席に座らせた。侍女に命じて酒を持って来させ、手ずから酌をした。花のように香り立つ酒だった。蘭語でいうところのWijn、葡萄から醸した酒かとも思ったが、違うものかも知れなかった。
 そして、乙姫はその酒のような美女だった。その微笑みに、人は酔ってしまうかも知れなかった。
 にもかかわらず、浦島の憂鬱は去らなかった。むしろ、くっきりと心の中に形を表してくるかのようだった。
「お待ち申し上げておりました」
「なぜ私を。誰かとお間違えなのではないですか」
「いえ、浦島太郎様、あなたです」
「私は、武士の家に生まれながら廃嫡されたような愚かな男です。そんな者を待っていたとは・・・」
「あなた様は、ご自分の価値がまだおわかりになっていないのです」
 乙姫の目が、今一段、熱を帯びた。
「わたくしと、めおとになって下さいませ」
「わからない。私は貧乏学者ですよ。お姫様と釣り合うわけがない」
「いえ、本来、わたくしこそ、あなた様と釣り合うようなものではないのです。いえ、この宮殿にいるものすべてを合わせても、あなたの足下にも及びません」
 太郎は、乙姫の目の輝きの中に狂気めいたものを感じた。その狂気は確かに美しいのかもしれなかった。だが、やはりそれは太郎を憂鬱にさせた。
「私は横浜に行かなければならない。いや、亀は私をオランダに連れて行くと約束したのだ」
「オランダに何がありましょうか」
「わかりません。だが、私はオランダに恩義がある」
「あなた様は、ご自身の価値がわかっておられないのです」
「価値などと言うほどのものはない。ただ、教え教えられ、学んでいくだけだ」
「ですから、あなた様は、そのようなものを遙かに超えた方だと申し上げております」
 侍女やサカナたちは、息を殺して二人を見つめていた。男女の睦言になるはずが、妙に緊迫した議論になってしまっている。
 そういえば、ここは妙な空間だ・・・と、乙姫とのあいだの会話が途切れたところで、浦島は辺りを見回した。
 海の中の筈なのに、息も苦しくないし、着物も濡れない。あたりは、薄青い帳で包まれたようで、そこここに赤や黄や緑や橙の灯が点っている。行灯のようでもない、鬼火のようでもない、西洋にあるというガス灯のようでもない。ただ、ぼんやりと冷たく、しかし十分な光度を供給している。
(なにか、まだ私の知らない理学があるのだろうか)
 乙姫は、いささか青ざめた顔で伏し目になっていた。泣いているのかもしれない。侍女が二人近づいてきて、乙姫の手を取り立たせた。そして、何処か奥へと行ってしまった。その後ろ姿を見て、太郎は何か悪いことをしたような気になった。
 取り残された太郎に別の侍女が近づいてきて、酌をした。
「浦島様。折角おいでになったのです。竜宮をお楽しみ遊ばせ」
 侍女が袖を振って合図すると、あたりにいたサカナたちが一斉に空間に散った。不思議な音楽が流れ、珊瑚や海草までもが踊った。なるほど、それは見ようと思っても見ることのできない豪奢な光景だった。
 しかし、それが美しければ美しいほど、華やかであればあるほど、太郎の旨には影が広がっていくのをどうしようもなかった。

「私は、やはりここにいるべきものではないような気がする。オランダとは言うまい、せめて元の海岸に戻して欲しい」
 太郎は侍女の頭に言った。
「申し訳ございませんでした」
 と言ったのは、いつの間にか傍らに戻っていた乙姫だった。
「確かに、あなた様は竜宮さえも超えたお方なのですわ。龍神の娘である私ならば、あなたを虜にできると考えたのが浅はかでした」
 そして、螺鈿をちりばめた箱を渡し、
「これは玉手箱です。きっと、あなた様のお役に立つはずです」
 乙姫は、鮮やかに身体を巡らすと、太郎から離れていった。
「浦島太郎様、もう今生でお会いすることはないでしょう」
 乙姫とは、この竜宮を照らす無数の灯のひとつであったか、と浦島太郎には思えた。

 もう、夕暮れだった。あたりの海面は、赤々とした光線を受けて輝き波立っていた。ただ、どちらに日が沈むのか見当が付かない。自分がどちらへ向かっているのか、わからない。
 陸地は見えなかった。日本に向かっているのなら、いずれ富士山が見えてきそうなものだと思った。
「元へなど、戻れやしない」
 亀がぼそっと呟いた。それきり口を聞かなくなった。ただ、真っ黒な大きな塊になってしまったようだ。
 向こうの海面から、何か黒いものが現れた。巨大なサカナか。どんどん、海中からその姿を現して、天へと向かっていくのだった。
 鳥か。巨大な鳥が海中から現れて、天へ向かっていくのか。
 鳥はどんどん、その大きさを増した。天を覆ってしまいそうだった。事実、燦めいていた海面は、その光を失っていった。
 そして、全天が覆い尽くされたとき、真の暗闇が太郎を隠した。亀はいなくなっていた。もはや、足の下に海はないようだった。といって、地面に立っているのとも違った。
 暗い虚空に、太郎がただ一人いるようだった。
「どうしたのだ。これが、私の帰るべき故郷、日本なのか」
 
 いや、ただひとつ、乙姫から渡された箱があった。その箱に埋め込まれた螺鈿は、自らほのかな光を放って、箱が手の内にあることを主張していた。
 太郎は、箱を開けた。なかから、光る煙が出て、太郎にまとわりついた。
 その煙の中で、自分の手を見ると、それは若者のそれではなく、骨の上に皺だらけの皮膚を貼り付けたようなものだった。太郎は、思わず自分の顔に手をやった。やはり、肌の張りは失われ、老人の頬が、そこにあった。のみならず、頬は深い髭に覆われているようだった。
「年を取ってしまった」
煙が消えると、ただひたすら暗かった。螺鈿の箱も消えてしまった。
「暗い」 
自分しかいなかった。あたりは空虚に満たされているとも言えたし、自分が空虚を満たしているかのようでもあった。
なるほど、自分の心を満たしていた憂愁は、この闇から立ち上ってきたものなのかと思えた。

 太郎は、しばらく黙ったまま立ち尽くしていた。そうして、どれくらいの時間が経ったことだろう。それは、一秒かもしれないし、一兆年かもしれなかった。
 もう、この暗さに耐えられそうもなかった。太郎のかさついた唇が動いた。
「光あれ」
 すると光があった。
始めに言葉ありき。