
蕪式会社文豪堂書店・社長でございます。
先週、高らかに誇らかに営業開始を宣言した途端、社長は風邪をひいちゃったのであります。
馴れないことは、やるもんじゃないってのの見本みたいなもんであります。
久々に高い熱が出て、いい年をしたおっちゃんにも、まだこんな熱が出る体力があったのね、てなことで驚いているんであります。
こういう話しが社長の健康不安説として市場に伝わると、弊社の蕪価に影響が出るんじゃないかと恐れるんでありますが、最寄りのOKストアでは一束198円あたりを保っているようであります。
大きな値崩れはございません。蕪主の皆様には、ご安心いただきたいと存じます。
また、一方では、「バカは風邪をひかない」という学界での定説への反証を身を以て示し、期せずして学問の進歩への貢献をしてしまったことにも驚く次第であります。
定説を守るためには、①社長はバカでない②あれは風邪じゃなくて水虫によるものだ、のどちらかを証明しなければなりませんが、大変難しいことだと思われます。
医者には行かず、ひたすら家で寝ておりました。私は、滅多なことでは医者にまいりません。
風邪なんて、寝てりゃ治るのであります。
まあ、お忙しい方々は寝てなんかいられないということで、薬をお飲みになったり注射をお打ちになったり、点滴にお繋がれになったりなさるわけですが、私の場合、百八十万年間売り上げゼロの社長でありますから、お忙しいわけがないのであります。
これも売り上げゼロの利点ですな。気持ちに余裕が生まれます。
「風邪は万病の元だぞ。別の病気を招き寄せたらどうするんだ」
とか、
「風邪だと思っても、実は別の病気かも知れないぞ」
などと、おっしゃる方もいらっしゃるかと思いますが、そんなのは信念でなんとでもなります。自分の身体に、
「これは風邪だ。しかも寝てりゃ治る風邪だ」
と、言い聞かせるのです。鬼のような顔をして言い聞かせます。聞かなきゃ引っぱたいてでも・・・って、自分で自分を引っぱたいても仕方がないのでそこまではしませんが、
「まあ、他の病気なんて、この熱で焼き尽くしてしまうのだよ、うふふふのふ」
と、不敵な笑いを浮かべて、自信ありげにうんうんと頷くくらいのことはしてもいいでしょう。
そういえば、以前、書店で
野口晴哉「風邪の効用」(ちくま文庫)という本を見て、なんとなく気になっていたのを思い出しました。
風邪の効用・・・つまり、風邪が役に立つというのです。あるいは、役に立ててしまおうというのです。ただ、意地を張って布団にもぐり込んでいる社長よりも積極的というか図々しいと言おうか。
果たして、どんな風に風邪を役立てているのか。クシャミの風圧で風車を回して発電をする、とか、おでこに薬缶を載せて湯を沸かす、とかではないと思いますが。
早速取り寄せて読んでみました。
著者の野口晴哉(1911-1976)という方は、整体という健康法というか治療法というかを考案した人なさった方らしいのです。
ちょっと、社長なりにこの本の内容を要約してみましょうか。
「風邪は自然の健康法である。風邪は治すべきものではない、経過するものであると主張する著者は、自然な経過を見出しさえしなければ、風邪をひいた後は、あたかも蛇が脱皮するように新鮮な身体になると説く。本書は、「闘病」という言葉に象徴される現代の病気に対する考え方を一変させる。風邪を通して、人間の心や生き方を見つめた野口晴哉の名著。解説 伊藤桂一」
・・・ありゃ、要約しているつもりが、いつの間にか文庫本の裏表紙の説明文を丸写ししていました。ま、私なんぞが下手に要約するよりもいいかも知れませんが。
(それにしても、「裏表紙」ってヘンな言葉ですね。裏なんだか、表なんだかはっきりしろと言いたくなります。知らない人が「うらおもてがみ」と読んだら、どうするんだっ、て、ちょっと怒ってみたくなります。)
野口さんに言わせると、風邪というのは自然な身体の調整であり、それを通してより元気になっていくものなので、無理に薬なんかで抑えるのはよくない、ということなのです。
さらに、ちょこちょこ風邪をひいている人の方が却って元気で長生きをするのであって、「わしは風邪一つひいたこと無い健康な身体あーる」などと威張っている人の方が、突然死んじゃったり重い病気にかかったりする、それは、健康なんじゃなくて風邪をひくことの出来ない鈍い身体なんだ、と言っておられるのです。
いろいろ、心と体の関係についても述べておられます。自分に注意を向けてもらいたいと潜在意識で思っている人は病気が治らない、とか、潜在意識は心に表れず身体に表れる、などと深いようなことも書いてあります。
人間て本質的に「かまってちゃん」なんですね。どうも、昔から「自立した個人」なんてのは無理なところがあると思っていましたが、いったん「かまってちゃん」なのを受け入れた上で考えた方が良さそうな気がします。
お風呂についても、「皮膚の排泄力」なんてことを言っておられます。人間の皮膚というのは、そのままで、要らないものを身体の外に出す機能があるのだから、石けんで洗うなんてのは、うんちが出るのに浣腸をしているようなものだ、なんておっしゃるのですね。
なんか一理あるような、それでいて実行が躊躇われるような話しですが、以前、タレントのタモリさんが風呂で石けんを使わない、なんてことを聞いたことがありますね。
(ほんとは、もっとびっくりするようなことも書いてあるですが・・・)
全体として社長にはわかりにくいところも結構ありました。
「整体」の関係者向け講演の記録みたいなので、かならずしもまとまった話でなく、特殊な用語が頻繁に出てくるので、わかりにくくなるのかと思います。
同じ文庫から同じ著者の「整体入門」という本も出ているので、それを合わせて読んだ方がいいのかも知れません。
(「なんだ、抱き合わせ商法かよ」などと思ってはいけませんよ)
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