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みなさまと共に歩む…… (*個人的な感想です)

ショートストーリー『アラジンくんと古い魔法のラムプ・幽閉された姫の巻』

よ(前回までのあらすじ:大富豪だったアラジン和雄くんは、だまされて財産を巻き上げられてしまい、ただ一つ、手元に残った魔法のランプとともに旅をしているのでした)

 いつの間にか、和雄くんは黒い森に迷い込んでいました。もう少し行けばなんとかなるだろうと思ったら、もっと森になりました。さらに進むと、さらにさらに森でした。なんというか、もうどうしようもないくらいに森でした。すごく森でした。ひどく森でした。
 和雄くんも、「森だなあ」と言うしかありませんでした。

「おい、魔法使い」
 と和雄は魔法のランプに呼びかけました。
「はい、お坊ちゃま」
 と、答えて出てきたのは、年老いた魔法使いでした。
「おまえ、ちょっと空を飛んで、何か見えないか、見てきてくれないか」
「お安いことでございます」
 森の一番高い木の一番高い梢の一番高いところにある葉っぱをすり抜けると、お日様に照らされた森がパセリ畑のようにどこまでも広がっていました。ただ、その真ん中あたりに、高い塔が、赤い帽子のような屋根を、にょっと突き出させていました。

「塔があるということは、誰か住んでいるということだね。じゃあ、そこで、ご飯を食べさせてもらおう」
 と、和雄は魔法使いの報告を聞いていいました。
「食べ物を恵んでくれるような優しい人だといいのですが」
「なに、世の中、そう悪い人ばかりじゃないさ。親切な人がいっぱいいるよ」
 全財産をだまし取られるというひどい目に遭っていながら、人を信じることを忘れない和雄を見ると、魔法使いは、なんだか心配になると同時に、心の底が暖かくなってうれしくもなってくるのでした。

 二人は塔の下にやってきました。ですが、どこにも入り口が見つかりません。困っていると、上の方から美しい歌声が聞こえてきました。
「私はとらわれの姫 悪い魔女にさらわれて 塔に閉じ込められている 白馬の騎士よ 私を救いに来て・・・」
 見上げてみると、上の方にたったひとつだけ窓があって、輝くばかりの金色の髪をしたきれいな女性が歌っているのでした。
「おお、あの姫が歌っているのだね。なにやらわけがあるらしい。魔法使いや、ちょっとあの窓へ行って、あの方のお話を聞いてきておくれ」
 魔法使いは煙のようになって、窓のところまで行きました。
「お姫様。私は、アラジン和雄という方の召使いのランプの精なのですが、今、お坊ちゃまがあなたのお歌を聴いて、大変感動されたのです」
「ああ、すると、あの下にいらっしゃる立派なフロックコートを着た若い紳士がその和雄さんですのね。私は歌の通り、ある王国の姫なのですが、悪い魔女に誘拐されて、この塔に幽閉されてしまったのです。私を救ってくださった方の、お嫁さんになりますわ」
「なるほど。では、お坊ちゃまに、その事情を伝えてきましょう。少しお待ち下さい」
 魔法使いは下に行ってしまいました。
 それを見て、美しく可憐な姫は塔の中に入りました。そして、
「ふん」
 と言うと、可憐さは消えて、なにやら残忍そうな表情が浮かびました。
「おい、魔女。さっきの歌、ちょっと狂ってたじゃねえか。あたしが歌っているんじゃないってことが、ばれたらどうするんだよ」
 と言って、手回し蓄音機のそばにうずくまっていた老いた魔女に蹴りをくれました。
「ひい」
 と、魔女は悲鳴を上げました。どうやら、さっきの歌は魔女が回す蓄音機から流れていたもののようです。
「お、お許し下さい。暴力反対・・・ああ、うっかり昼寝をしていたところを、この不良少女に魔法の杖を奪われたばかりに、こいつの言うことを聞かなければならなくなってしまった。一生の不覚じゃったわい」
 そうなのです。
 今、魔女が説明的なセリフで説明したように、この娘は姫でもなんでもなく、たまたま魔法の杖を手に入れ、魔女を奴隷扱いしているだけだったのです。
「うるせえな。ここでこうして歌っているフリをしていれば、どっかの王子様が救いに来るんだよ。そいつをとっ捕まえて結婚しちまうまで、お前はあたしの奴隷だよ」
 なんという恐ろしい計画でしょうか。和雄はニセ姫の計略に引っかかってしまうのでしょうか。

「お待たせしました」
 また、ランプの魔法使いが窓にやってきました。
「お坊ちゃまと慎重に検討しましたところ、私と魔女が魔法合戦をして、勝ったらお姫様をいただくということにしたいと存じますが」
「結構ですわ」
 ニセ姫は答えながら、魔女の方をじろりと睨みました。
「へ、へえ、私はなんでもようございます」
 魔女は慌てて答えました。

 さあ、魔法合戦の始まりです。まず、魔女は空中に岩を出現させました。岩が、和雄とランプの魔法使いめがけて襲いかかってきます。
「なにをこしゃくな」
 魔法使いは対抗して、空中に巨大なハサミを出しました。
「これで、岩など切ってしまうぞ」
「おい、魔法使い。石とハサミでは、ハサミが負けるんじゃなかったっけ」
「ありゃー。お坊ちゃま、私の不覚でございます」
 なるほど、岩を切ろうとしたハサミは、逆に刃こぼれをしてしまって、キャインキャイン、と泣きながら何処かへ行ってしまいました。
「ハサミがだめなら、これだ」
 魔法使いは、空中に大きな紙を出現させました。
「石には紙、というのがジャンケンの定石でしたな。和雄坊ちゃま」
「それなんだけどね」
 と、和雄が答えます。
「紙は石を包むから勝ちだって言うんだけど、昔からヘンだと思っていたんだ。包むくらいで勝てるのかね。破けちゃったら、どうするだろう。石対ハサミ、ハサミ対紙は納得できるんだけど

 空中では紙と岩の戦いが続いていましたが、紙が岩を包むことに成功しました。
「包みましたぞ」
「大丈夫なのかなあ」
「あ、岩が苦しんでおります! 包まれて苦しんでおります!」
 岩は紙の中で、もがいているようでしたが、やがて静かになりました。
「おお!」
「伝説の通り、紙が石に勝ったぞ。包み殺してしまったらしい!」

 約束通り、ニセ姫は和雄のお嫁さんになることになって、魔女がホウキに乗せて、下の和雄達の所へ降りてきました。
「ああ、どうぞ、結婚でも何でもして下さい」
 と魔女は、せいせいしたように言いました。ところがニセ姫は、
「ありゃ。なに、この貧乏くさいフロックコートは」
 そうです。高い塔の上から見たときは立派なフロックコートに見えたのですが、近くに来てみると、あちこち擦り切れかかった、くたびれたコートなのでした。
 和雄が、自分が騙されて財産をみな取られてしまって、ご飯を恵んでもらうために塔に立ち寄ったことを話すと、ニセ姫はさんざん悪態をついた上で、
「婚約解消! 誰が、こんな乞食と結婚するかよ。おい、魔女、もう一度、あたいを塔の上に連れて行くんだ。本物の王子様が来るまで、網を張り続けにゃならん」
「ひいいい」
 魔女は、泣き出しました。
 
その時です。

空中で紙に包まれていた岩がニセ姫の上に落ちてきました。

 ニセ姫は潰されて死んでしまいました。
 
魔女は、二人に何度もお礼を言うと、ホウキに乗って、何処かへ行ってしまいました。

 二人は、また森の中、旅を続けました。
「ご飯、恵んでもらえなかったね」

(たぶん、次回もアラジン和雄くんの話です)

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Author:文豪堂
いらっしゃいませ。中川善史(自称社長)と金井哲夫(自称編集局長)が2人でしこしこ書いているふざけた電子書籍本を販売する「蕪」式会社文豪堂書店です。(社名は予告なく変更することがあります) (なおこれは個人の感想です)(効能を保証するものではありません)(おだてると調子に乗ります)

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