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金井哲夫の編集日記 想像上の中川社長の言葉はやっぱり異次元だった想像上の話

神
よく行く近所のホームセンターでは、コロナが流行ってから毎日、館内放送が流されている。手を消毒しろ、人との間を開けろなど、ずーっと注意事項が放送されていて、まるでジョージ・オーウェルの『1984』みたいで怖いのだけど、ひじょーに気になるのは、その声。アニメ声優っぽい女の子の、鼻にかかった甘ったれた「にゃんにゃん」みたいな声なのだ。

気持ち悪いのは個人的な好みの問題なので置いておくとして、どうしてあんな小学生みたいな話し方をするのか。いや、小学校の放送委員なら、むしろ大人っぽく聞こえるように精一杯背伸びをした話し方をする。あれほど露骨にエロアニメのクソ美少女キャラみたいな口調にはならないはずだ。社長の好みだというなら許してやってもいいが、ひとついやーな懸念が頭を駆けめぐる。

クレームを恐れて、客の顔色をか伺っているのではないか。ごくごく一部のクソバカタレなモンスタークレーマーを恐れて、最初から「ごめんなさい、ごめんなさい、子どもなんだから、そんなに怒らないでね、にゃんにゃん」と謝っているのではないか。その卑屈な態度が気に入らない。謝りたいのなら、クソバカタレだけをスタッフルームに呼んで心ゆくまで土下座でもすればいいものを、大多数の善良な客にまで謝られては、こっちもクソバカタレの同類として扱われているようで非常に不愉快だ。

しかも、一連の注意事項を話した最後に「ご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくお願いしむぁうす」と上目遣いな媚びた口調で締めくくる。あー、気に入らない。「ご迷惑をおかけします」って、新型コロナを流行らせたのはお前なのか? お前が新型コロナの責任者か? 

こんなとき、中川社長が生きていたらなんと言うだろう。大井町の大阪王将で昼間から生ビールを飲み、木須肉を一口つまんでむしゃむしゃとやったあと、ボクの顔を見てニヤリと笑って、こう言ったかも知れない。

「それは神なんだな」

中川社長は、ボクの与太話にいつも思わぬ方向からコメントを加えてくれた。まったく想像もしない、縦でも横でも右でも左でもない、頭の後ろからドンと来る。

「何万年も前から人々に崇め奉られ続けてきたから、崇め奉られ飽きてしまったんだな。だから、思いっきり謙ることにした。世の中で考えられる限り底辺のどん底の最低の人格であるエロアニメの美少女キャラに化身して、もっとも庶民的な、平凡な人たちの願望や欲望が渦巻く、かつて神社が担っていた役割を背負うホームセンターという場所で謙っている」

ほう、なるほど、そういうことだったのか。

「崇め奉ろうものなら、キミの街は一瞬で焼き払われる。ちょっと敬語を使っただけでも地獄に叩き落とされる。常に横柄に接していないと怒る。ただし、度を過ぎると怒って村が洪水に押し流される」

ロクなもんじゃないな。

「そもそも神なんて、ロクなことをしないものだよ。天変地異を引き起こして、人々を恐怖と不幸のどん底に叩き落とすのは昔から神の役目だ。悪魔のやることなんて、個人的なレベルに留まる。そのくせ、どんなにお賽銭を投げてお願いをしても、望みが叶うことなど万にひとつもない。偶然のほうが、よっぽど確率が高い。神は何もしない。ただ、たまたまいいことが起きると、神様のおかげだなんて庶民がはしゃぐもんだから、神は図に乗る。図に乗った挙げ句に、図に乗り飽きて、別の方向に動き出したのだな」

面倒臭いやつだ。神社の正しい参拝方法なんてよくテレビでやってるが、そう考えるとじつに馬鹿馬鹿しい。

「だから、『ご協力のほど、よろしくお願いもうしあげむぁーす』とか言われて、「はい」なんて返事をしようものなら、地獄の炎に焼かれるぞ。『おう、わかった』ぐらいがいい。だが『いちいちうるせーよ』とまで言ってしまうと、村中の人間が汚物の海に頭から放り込まれるので、そのつもりで」

村じゃないけど。しかしさすがは中川社長だ。想像上の中川社長であっても、その言葉に心底納得した。

おしまい
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