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社長の業務:ナンセンスファンタジー『毒ずきんちゃん その8 民の王を見る目 まさかの時に毒ずきん そして両生類との死闘のこと』

社長1 ここは眠り姫の生まれた月の蝶の翅の城です。眠り姫の父王が治める国は、小さいながらも豊かで平和で人々は穏やかに暮らしておりました。
 その一室で、王様とお后様が何か話をしています。
王「后。最近どうも国の中が何やら落ち着かないように思えてならぬのだが。ポコペン」
后「そうでしょうか。王様は民を愛し、民は王様を尊敬し、民同士は睦み合っていると思いますわ」
王「だが、民の余を見る目が以前と違っているように思えてならぬ。ポコペン」
后「王様、今、なんとおっしゃいました?」
王「だから、民の余を見る目が・・・」
后「いえ、一番最後でございます」
王「最後? 別に何も言わぬぞ、ポコペン」
后「それならよいのですが」
王「后は、何か聞こえたか」
后「いえ、わたくしの聞き間違いでしょう」
王「気になる。なんと聞こえたか申してみよ、ポコペン」
后「いえ、なにか最後にポコペンとおっしゃったような気がしたものですから」
王「ポコペン? 余がそのような馬鹿げたことを言うわけはないではないか、ポコペン」
后「そうですわね」
王「はっはっは。ポコペン」
后「言った」
王「へ?」
后「今言った、ポコペンって」
王「余がポコペンと? ポコペン・・・あれ?」
后「言ってる、確かに言っている」
王「ポコペン。本当だ、ポコペン。確かに、ポコペン・・・余は別に言おうと思っているわけではないのに、勝手に出てくるのだ、ポコペン・・・そういえば、前に余が民に向かって演説をした時から、どうも変な感じがしておったのだ、ポコペン。あれは、民がポコペンを聞いて戸惑っておったのかもしれん、ポコペン・・・」
后「実はわたくしも、ひとつ気になることがありますの」
王「なんじゃ、ポコペン」
后「姫のことでございますわ。あの美しく可愛らしい姫が、どうも最近、目は怪しくにごり、口は耳まで裂け牙が生え、鼻は口元まで垂れ、髭まで生えているような気がいたしますの」
王「まさか、ポコペン。それじゃ、まるで魔女ではないか、ポコペン」
后「王様のポコペンといい、姫といい、魔女がこの国によからぬ魔法でもかけているのではないでしょうか」

「わっはっは、この国によからぬ魔法をかけてやったわい」
 という高笑いが姫の部屋から聞こえてきました。笑いの主は、姫の部屋で姫のドレスを着て姫のソファに腰掛けているのですが、その顔は魔女でした。
魔「まず、わしを嘲笑った姫に魔法をかけて黒い森の奥で眠らせてやった。そして、わしが姫に化けて城の中に居座っているのじゃ。家来ども、よく化けたものだと思うじゃろうが」
家「そ、そうですね・・・」
 と、部屋の隅にいた三人の家来が仕方なさそうに返事をしました。よく見ると、この三人というのは、なんと第二回に出てきたカエルの姿をした王子、第三回に出てきた眠り姫にドラゴンの宝石を取ってこいと言われてひどい目にあったオートモ王子、そして、前回出てきたマクベス王でした。
毒ずきんちゃんと眠り姫のためにひどい目にあった三人は、魔女の手下になって仕返しをしてやろうと思ったのです。
魔「そして王を、言葉の最後にポコペンと言わずにおれないポコペン病にしてやった。いずれ、人民の中に王はアホではないかという疑惑が拡がり、その支持を失うであろう。その時、わしが王を退位させ幽閉する。そして、女王として後継者となるのじゃ。この国では二十歳にならぬものが王位を継承した場合、摂政を置かなければならぬとされているが、お前たち家来を摂政にしてやってもよいぞ」
カエル「それは、有難き幸せ」
オートモ「先生、質問があります」
魔「なんじゃ」
オ「魔女様はどう見ても百歳は越えているように見えるのですが」
魔「わしじゃない。あの眠り姫が17歳なのじゃ」
マクベス「あの姫が17歳? あの根性のひん曲がった、王様友の会の会計を私物化している姫が17歳?」
魔「まあ、性格だけ見れば、どう見てもお局様か大年増なのじゃが事実だから仕方がない。だが、その姫も黒い森の奥じゃ。キスをするものが現れなければ、眠りからは覚めないのじゃ」
カ「魔女様、お言葉を返すようですが、眠り姫はとっくに眠りから覚めていますよ。黒い森に住む毒ずきんという女の子にキスされてしまったんです・・・ちくしょう、俺もしたかったなあ」
魔「なんじゃと、今はどこにいるのじゃ」
マ「先週は、元の私のマクベス城に現れましたな」
魔「なに? すぐそばじゃないか! 魔法の鏡を持て。今、どこにいるのか占ってやろう」
 三人が大きな姿見を運んできました。魔女は鏡に向かって、
魔「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ? わ・た・し?」
 と聞きました。ぴしっと音を立てて鏡が割れました。
カ「魔女様、そんな質問するからですよ」
魔「どうも、鏡を前にするとこれをやらずにはおれなくってな。新しい鏡を持て」
 新しい鏡に毒ずきんちゃん達の居所を訊くと、鏡の中に城の像が浮かびました。
カ「何処かの城にいるようですな」
オ「見たことがあるような城ですな」
マ「月の蝶の羽の城によく似ていますな」
三人「あ、道理で見たような城だと思った。ははははは」
魔「笑っている場合じゃなーい! ここじゃないか!」
 
 その時遅くかの時早く、高らかな笑い声が部屋の中に鳴り響きました。
「はははははははは」
魔「な、なにやつ」
毒「まさかの時に毒ずきんちゃん!」
姫「と、眠り姫!」
 二人、カーテンの影から颯爽と登場。
毒「やいやい、てめえら。悪巧みはみんな聞かせてもらったぜ。もう逃れられねえ、観念しろい。神妙にお縄を頂戴しやがれ!」
(画面にタイトル『毒ずきん捕物帖』、テーマソング流れる)

♪すっちゃか すちゃらか・・・

♪女だてらに十手を持って
 悪はあたしが許さない
 ちっちゃなからだで 毒ずきん
 八百八町を駆け抜ける
 
♪男心を手玉にとって
 捕り物に咲く 花一輪
 娘盛りよ 眠り姫
 明日もお江戸は日本晴れ
 
 じゃ~ん・・・

 歌い踊る二人を、魔女達は呆然と眺めておりましたが、はっと我に返って、
魔「曲者じゃ! 出会え、出会え、出会え!」
すると、カエル王子が一歩前に出て、
カ「魔女様、こんな奴らは私一人でたくさんです」
 そして剣を抜き放ったかと思うと、
カ「毒ずきん、お前のキスのお陰で俺は人間の姿に戻れなくなってしまったんだ。この恨み、倍返しだ!」
 と、何処かで聞いたような台詞を言いましたが、
毒「ちょっと待て。お前、あたしにばかり恨みを持っているみたいだが、そもそも、お前をカエルの姿に変えたのは魔女だろう?」
カ「・・・・・・あれ?」
 カエルは考え込んでしまいました。深い沈黙があたりを包みます。さっきまで大騒ぎしていただけに、その静けさが余計に際立ちます。
カ「そういえば、そうだ」
 一生懸命、第二回のことを思い出していたカエルが言いました
毒「じゃあ、まず魔女の恨みを晴らすのが先だろうが」
カ「いやあ、全くおっしゃる通り」
 カエルがおそるおそる魔女の方を振り返ってみますと、その濁った目が今はらんらんとした真っ赤な光を放っているのと視線がまともにぶつかってしまいました。
カ「ありゃあ、まさに前門の毒ずきん、後門の魔女、そして、あたしゃか弱いカエル・・・とても、かなうわけがございません!」
 と言うや、ぴょーんと飛び跳ねて窓から外へ逃げて行ってしまいました。最後に遠くの方から、ぽちゃんという水音が聞こえました。
毒「これで一丁上がり」
魔「なんの、まだわしの家来は二人おるぞ」
 そうです。ドラゴンに戦いを挑んだこともあるオートモ王子、そして勇猛にして残忍と言われたマクベス、二人の強敵に毒ずきんちゃん達はいかに立ち向かうのでしょうか。さらにその背後には魔女が・・・。
手に汗握る次回を待て!
姫「なんだか、馬鹿馬鹿しい戦いになりそうですわね」
(つづく)




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